ドイツのエネルギー・環境分野の最新情報をお届け

2025年第1号

 

目次

 

ごあいさつ

経済ニュース

環境ニュース

イベント報告

イベント案内

 


ごあいさつ

 

読者の皆様、

春の訪れとともに、ドイツでも日差しが徐々に暖かさを増してきました。4月1日に行われたハノーバーメッセにおける日独経済フォーラムでは、多くの方々にお越し頂き、ありがとうございました。現在の世界的な地政学的状況の中で、産業界や国家間の協力関係を育み、強化することはこれまで以上に重要となってきています。また、対面での交流がもたらす深い洞察や共感は、デジタル時代においても変わらぬ価値を持っていることを改めて実感しました。

2024年2月のドイツ総選挙以降、ドイツの政治は大きな転換点を迎えています。現在、第一党であるCDU/CSUと社会民主党(SPD)による連立交渉が行われていますが、再生可能エネルギーの具体的目標やCCUへの方針、また現行の暖房法を巡って意見が分かれる部分が多々あり、見通しは非常に不透明です。ただ、気候中立と脱炭素という大きな方向性は変わらないとみられ、新たな規制や補助金制度がどのような形で導入されるかが注目されます。このような新たな制度に対する企業の適応が求められる中、弊社では最新の政策情報をもとに、クライアントの皆様に最適なソリューションを提供できるよう努めております。 今後も皆様のビジネスやプロジェクトがより良い形で発展するよう、最新情報の提供と実践的なサポートを続けて参ります。

 

ヨハンナ・シリング

ECOS代表取締役


経済ニュース

 

ドイツ経済 第一四半期の見通し:停滞が続くも一部に回復の兆し

内需・外需の停滞と地政学的リスクが回復を阻む。製造業は回復傾向も、消費と雇用環境は依然厳しい。

ドイツ経済は2025年の年初から低迷が続いており、内需・外需ともに伸び悩んでいる。特に地政学的リスクの増大と貿易環境の不透明感が、景気回復の足かせとなっている。産業部門は比較的安定しているものの、サービス部門の低迷が全体の経済成長を抑制している。

1月の製造業生産は前月比2.0%増と回復を見せたが、受注は7.0%減少し、回復基調が確実なものとは言えない。12月の製造業の受注は6.9%増と一時的に持ち直したものの、全体として横ばいの状況が続いている。建設業は低成長が続き、エネルギー部門も減少傾向にある。 小売売上高は微増しているものの、新車登録台数は1月・2月ともに減少し、消費者の購買意欲の低迷が続いている。雇用環境も厳しく、2月の失業率はわずかに上昇し、短時間労働の申請も増加傾向にある。

インフレ率は2月時点で2.3%と横ばいであり、欧州中央銀行(ECB)の目標に近い水準を維持。食品価格の上昇は続くものの、エネルギー価格の低下によりインフレ圧力は和らいでいる。ただし、一部の行政価格引き上げが影響し、インフレの大幅な低下は年後半にずれ込む見通し。 景気の先行指標には底打ちの兆しがあるものの、依然として不透明な状況が続いている。特に米国の通商政策などの地政学的リスクや、企業の景況感の低迷が経済回復を遅らせる要因となっている。短期的には大幅な回復は期待しにくく、景気の改善には時間を要する見込みである。

(出典:2025年3月17日ドイツ連邦経済省プレスリリース、2025年2月13日、ドイツ連邦経済省プレスリリース

©Pixabay

総選挙においてCDUが勝利、気候変動政策への影響は

CDU勝利、AfDが第二党に躍進し政権運営に課題。CDUとSPDが大連立交渉を進めるも、AfD躍進で難航必至。財政政策やエネルギー政策の見直しが焦点となる。

2月23日に行われた総選挙の結果、フリードリヒ・メルツ党首率いるCDU(キリスト教民主同盟)が勝利、極右のAfD(ドイツのための選択肢)が第二党に躍進した。ショルツ首相率いる社会民主党は第三党に後退。現在、CDUとSPDの間で大連立に向けた交渉が行われているが、AfDが第二党に躍進した中、政権運営は難しい舵取りを迫られる。新政権の課題として、2025年度予算の成立や債務ブレーキ(財政赤字抑制策)の見直しが焦点となる見込みである。また、移民政策の厳格化や防衛費の増額、環境・気候変動政策の方針転換なども議論される可能性がある。CDUは、2035 年以降の内燃機関車販売禁止方針の撤回や原子力発電の利用再開を主張しており、これらが今後どのように政権運営に反映されるかが注目される。また、前政権が導入した暖房法(住宅・産業用地などの新興開発地で新たに設置する全ての暖房設備のエネルギー源について、65%以上を再エネ由来とすることを義務付けるもの)についても廃止を公約に掲げており、これらが実現するかどうかもポイントとなる。 現在、CDU/CSUはSPDと連立交渉を行っている。再生可能エネルギーについては、両党とも拡大を目指しているが、風力発電の面積目標については意見が分かれている他、CCSやCO2貯蔵技術についても見解が分かれている。

(出典:3月28日シュピーゲル等)

 

電気自動車の欧州市場、減速へ

2024年のEV販売は1,040万台で前年比14.3%増。中国が市場を牽引する一方、ドイツは補助金廃止の影響で27%減となり4位に後退。

2024年、純粋な電気自動車の世界販売台数は1,040万台となり、前年比14.3%の増加を記録した。中国では670万台が販売され、20%の伸びを示して世界をリード。これに続くのは米国で、販売台数は120万台、7.4%の増加となった。ドイツはイギリスに次いで4位に後退した。ドイツでは、購入補助金の廃止により販売台数が27%減の38万1,000台に落ち込み、EU全体の市場の勢いを鈍化させた。また、特別な要因として、2025年に強化されるCO₂規制に対応するため、メーカー各社が販売を一部延期した結果、2025年初頭には登録台数の増加が見込まれている。ドイツに加え、フランス、オーストリア、イタリア、スウェーデンといった国々でも販売台数が減少したが、その下落幅は比較的穏やかであった。一方、イギリスでは販売台数が21%増加し、ドイツを上回った。中国では、電気自動車の「スクラップ・スキーム(廃車補助制度)」が販売を大きく後押ししている。現在、ドイツ市場は政治的および経済的要因に大きく左右される状況にある。

(出典:2025年1月27日、ターゲスシャウ

米国関税政策のドイツ経済への影響は

2025年4月6日から、米国は全ての輸入品に最低10%の関税を課す新たな政策を導入する。さらに、相手国の貿易障壁に応じた「相互主義的」関税が適用され、特にEUには追加の20%関税が予定されている。これにより、ドイツ経済には大きな影響が及ぶと予測されており、特に自動車業界や機械産業が深刻な打撃を受ける見込みである。

2025年4月6日から、全ての国からの米国への輸入品に対して最低10%の関税が課される。さらに、4月9日からは「相互主義的」関税も導入され、相手国の既存の貿易障壁に応じた関税が課される。EU(欧州連合)に対しては、追加で20%の関税が予定されている。 ただし、銅、医薬品、半導体、木材、金、特定の鉱物などは対象外となる。これに加え、3月12日からは鉄鋼とアルミに25%の特別関税が適用されており、4月3日からは自動車にも拡大されている。この発表を受けて、欧州の株式市場は大きく反応。ドイツの代表的株価指数DAXは500ポイント以上下落(約2%減)。特に物流・海運業界(MaerskやHapag-Lloydなど)が最大で10%の下落を記録。ドイツ経済にとっても打撃は大きく、対米輸出が20%減少し、GDP(国内総生産)は0.3%落ち込むと予測されている。特に自動車業界や機械産業が深刻な影響を受ける見込みである。ドイツ国内では、アメリカからの輸入品の価格が上昇し、インフレが進む可能性がある。これにより、消費者の購買力が低下する懸念も。 EUは対抗措置として、アメリカ製のジーンズ、ウイスキー、バイクなどに報復関税をかける方針を示しており、アメリカ側に再考を促す狙いがある。専門家たちは、ドイツが輸出依存から脱却するため、インフラ投資などを通じて内需拡大を目指すべきだと提言している。

(出典:2025年4月3日Zeit


環境ニュース

 

スタートアップ企業Dvlp、独におけるPV・蓄電池プロジェクトを支援

dvlp、再エネ立地評価ソフトでプロジェクト成功率向上へ。太陽光・風力発電の適地評価を支援するクラウドソフトを開発。データ分析と自動化でプロジェクトの失敗リスクを低減し、業界で高い評価を得る。

dvlpは、太陽光発電所、蓄電池、風力発電所の立地を特定・評価するクラウドベースのソフトウェアを開発した。このソフトウェアは、自然保護、グリッド接続、空間計画に関する定期的に更新されるデータを分析し、プロジェクトのリスクを最小限に抑えるのに役立つ。dvlp という社名は、developの略語であり、会社のビジョンを反映している。主な顧客は、ドイツのエネルギー・インフラ・プロジェクトの開発業者である。 プロジェクト開発者は、透明性のないデータ、マニュアル化されたプロセス、当局、自治体、地権者などの利害関係者間の不十分なネットワークに苦慮している。その結果、プロジェクトの約90%が失敗に終わっている。かつては、プロジェクト開発者は自らデータを入手するために多大な労力を費やさなければならなかった。また、国レベルのジオビューワーしかなく、その種類も多岐にわたっていた。dvlpのユニークな機能には、電力網や空間計画に関する特別に開発されたデータセットや、検査報告書やオーナー照会などの自動化されたプロセスがある。dvlpは、ドイツのプロジェクト開発者の大半に使用されている。ドイツ連邦経済省スタートアップ賞やスマーターE賞など、数々の賞を受賞している。

(出典:2025年1月17日、PV Magazine

Foto: dvlp.energy

フラウンホーファーISE、電気自動車の急速充電向け新技術を発表

高電圧・炭化ケイ素半導体を活用し、効率的な充電ステーションを開発。コスト削減と柔軟性を両立し、再生可能エネルギーとも統合可能。

フラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(ISE)は、パートナーとともに、メガワットの急速充電ステーションに使用される新しい中電圧システム技術を開発した。この技術により、増加する電気自動車に効率的に電力を供給するため、数メガワットの出力を持つ充電ステーションを設置することが可能になる。このシステムは、炭化ケイ素半導体を利用し、1500ボルトの高電圧を利用することで、性能を損なうことなく材料使用量とコストを削減する。この新技術は柔軟性があり、さまざまなサイズや車種の充電ステーションに適用できる。また、蓄電池システムにも適している。中央整流器とモジュール式DC/DCコンバーターにより、自動車の充電ステーションから急速充電ステーションまで、さまざまな用途に電力を容易に拡大・調整できる。開発されたシステムは、欧州の共通規格CCS1およびCCS2と互換性があり、メガワット充電システム(MCS)もサポートする。この技術は、再生可能なハイブリッド発電所や定置型蓄電池にも利用できる。

(出典:2025年1月15日、PV Magazin

 

欧州エネルギー市場の動向と2025年の見通し

欧州エネルギー市場、供給増と地政学リスクで価格変動続く見通し。再生可能エネルギーの拡大と仏原発復調で供給増加も、地政学的緊張や政策不確実性が価格変動を招き、2025年も影響が継続へ。

2023年と2024年における欧州の卸売エネルギー価格の動向を比較。以下のような結果と要因が浮き彫りとなった。

供給増加と価格低下の背景

2023年と比べ、フランスの原子力発電と水力発電が大幅に増加した。これにより、フランスの純電力輸出量は22年ぶりの高水準に達した。一方、欧州全体では再生可能エネルギーの統合が進み、特に太陽光発電が前年比20%増加し、電力価格の一部がマイナスとなる場面が記録された。需要の回復が遅れたことが、電力およびCO2価格の下落要因となった。

気候条件の影響

2023/24年冬の穏やかな気候により、ガスの備蓄放出が抑えられ、再備蓄が促進された。これが一時的な価格低下をもたらしたが、2024年後半の寒波やLNG輸入の減速により、欧州のガス備蓄は5年平均を下回った。さらに、ウクライナのガストランジット輸送契約の失効やロシアからの供給減少が供給不足を悪化させた。

地政学的要因と政策の影響

2024年後半、中東紛争の激化が供給リスクを高めた。加えて、米国のトランプ政権第2期の発足を受け、中国との貿易関税やイラン産原油制裁の可能性が懸念されている。同時に、ドイツ政府の崩壊とそれに伴う連邦議会選挙が、石炭廃止や水素燃料発電所建設計画に影響を及ぼし、欧州全体のエネルギー政策に不確実性をもたらした。 2024年の複雑な状況を受け、エネルギー価格の変動は2025年も続く可能性が高い。地政学的、政治的要因や気象条件の影響が重なり、価格の高止まりが予想される。

(出典:2025年1月15日、PV Magazin

 

BP、リンゲン・グリーン水素プロジェクトに投資

BPはリンゲンに100MW規模の水素プラントを建設し、年間1.1万トンを生産予定。製油所や工業向けに供給し、脱炭素化とエネルギー転換に貢献。

BP社は、「リンゲン・グリーン水素」プロジェクトの最終投資決定(FID)を行った。これにより同社は、ドイツにおけるグリーン水素の工業的規模での開発に向けて、重要なマイルストーンを達成することを目指す。IPCEIプログラム(欧州共通重要プロジェクト)の資金援助を受け、100MWプロジェクトの一環として建設されるプラントは、年間最大1万1,000トンのグリーン水素を生産できる。

プラントはリンゲンのbp製油所の隣に建設され、水素コアネットワークに直接接続される。このプラントは、bpにとって世界最大の工業規模でのグリーン水素製造プラントとなる予定であり、同社が完全に所有・運営する最初のプラントでもある。製造されたグリーン水素は、bpの製油所やこの地域の工業用顧客に提供され、生産プロセスの脱炭素化を支援し、ドイツのエネルギー転換の野心的な目標達成に貢献する。電解槽に必要な再生可能電力は、当初、洋上風力発電の売電契約(PPA)に基づいて供給される予定である。

リンゲン・グリーン水素のようなプロジェクトは、脱炭素化に貢献し、低排出エネルギー・ソリューションへの移行を支援することができるため、地域、パートナー、顧客、そしてbp製油所を含むbpの価値創造に貢献することが期待される。 本プロジェクトは、欧州における水素産業の発展を支援するプログラムであるIPCEI Hy2Infra waveの一環としてEUの資金提供を受けていた。 今回の投資は、bpの水素およびCCS計画の規模拡大計画に沿ったものである。建設開始は2025年の予定で、試運転は2027年に予定されている。

(出典:2024年12月18日、BPプレスリリース

 

サウジアラビア、再生可能エネルギー推進でイタリアと連携、ドイツも恩恵

イタリアとサウジアラビアは、グリーン水素の欧州供給で共同投資を検討。サウジは再生可能エネルギーへ大規模投資を進め、ドイツ経済も恩恵を受ける可能性がある。

イタリアとサウジアラビアは、イタリアのジョルジャ・メローニ首相とムハンマド・ビン・サルマン皇太子との会談の場で、約100億ドル規模の協力および産業協定を締結した。その中には、欧州へのグリーン水素供給のための共同投資を検討する合意も含まれており、この分野はドイツにとっても関心が高い。ドイツとサウジアラビア間にも同様の協力協定が存在している。 世界最大の石油輸出国であるサウジアラビアは、再生可能エネルギーの推進に向けた野心的な計画を進めている。サウジアラビアの国家基金は、国内で大規模な太陽光発電所や水素プラントの建設、風力発電機の設置に数十億ドルを投資し、経済の石油依存を低減させることを目指している。2030年までに、発電量の半分を再生可能エネルギーから、残りの半分をガス火力発電所から賄うという目標を掲げている。 現在の化石燃料依存を考えると、この目標は非常に高い目標に思えるが、アナリストによれば、達成には遅れが出る可能性があるものの、実現は可能だとされている。サウジアラビアの計画が成功すれば、2027年から巨大な施設から「グリーン水素」を輸出できるようになり、ドイツ経済もその恩恵を受ける可能性がある。

(出典:2025年1月27日、ハンデルスブラット紙

 

ドイツ政府、カナダ・オーストラリアとの二国間H2Global入札に資金拠出

EU、H2Globalプログラム第2回入札を承認、グリーン水素調達支援。ドイツとオランダが共同購入枠を設定し、再生可能水素製品の大量輸入を促進。国際契約締結により、ドイツの水素経済の発展が加速。

欧州委員会は2024年12月18日、H2Globalプログラムの第2回入札に対する国家助成法の承認を行った。これにより、ドイツ連邦政府はグリーン水素およびその派生品の世界的な調達を支援し、それらをドイツに輸送して国内でオークション形式で販売することが可能となる。今回の新しい入札ラウンドの重要な要素の一つは、オランダとの共同購入枠であり、これは分子状水素のみを対象としている。

この承認により、海外での長期的な購入契約を迅速に締結することが可能となり、価格に関する重要なシグナルを提供し、大量の再生可能な水素製品の輸入を促進することが期待されている。これは、グリーン水素に依存しているドイツ産業にとって重要な意味を持つ。国家水素戦略に基づき、2030年までにドイツで使用される水素の50~70%を輸入に依存する目標が設定されている。 この入札では、エネルギー輸入の多様化を目指している。契約は北米、南米、オーストラリア、アジア、アフリカのプロジェクトに対して提供され、最もコスト効率の高い提案が選ばれる予定である。総調達額は25億ユーロに達する見込みで、そのうちドイツが22億ユーロ、オランダが3億ユーロを拠出する。ドイツ政府が推進する水素経済のための枠組みH2Globalの運営を担う法人HINTCO GmbHが仲介者として競争入札による長期契約を締結し、再生可能エネルギーおよび水素関連製品の生産への投資を促進する役割を果たす。Hintcoの主な役割は、グリーン水素やその派生品(例:アンモニア、メタノール、ケロシンなど)の国際的な取引を促進し、気候変動対策を進めることである。特に、輸出国と輸入国間の二国間協定を通じて、持続可能な水素経済の構築を目指している。 ドイツ連邦経済・気候保護省は、カナダおよびオーストラリアとの二国間H2Global入札に最大5億8800万ユーロを拠出することを1月に発表。これは2024年の意向表明に基づくものであり、カナダとオーストラリアの協力により、総額は最大12億ユーロに達する見込みである。入札は輸出国と輸入国が協力し、クリーン水素とその派生品の多様化を促進する。ドイツがEU委員会から国家支援通知を取得後、入札詳細が提供される予定である。

(出典:2024年12月ドイツ連邦経済・気候保護省、2025年1月Hintco

 

陸上風力タービンの新規建設許可が過去最高に

2024年、ドイツは新たに2,400基の陸上風力タービンを承認し、風力発電容量は大きく増加。特にノルトライン=ヴェストファーレン州が先導し、再生可能エネルギー拡大への期待が高まる。一方、認可から運転開始までに時間がかかり、実際の運転開始は減少したものの、業界は楽観的に捉えている。

昨年、ドイツではこれまでになく多くの陸上風力タービンの新規建設が許可され、全国で約2,400基のタービンが建設された。陸上風力タービンの許可件数は2024年に新記録を達成した。ドイツ風力エネルギー協会(BWE)とVDMA電力システム協会によると、当局は合計2,405基の風力タービンと14ギガワットの出力を持つプロジェクトを承認した。このような前向きな展開にもかかわらず、同年に運転開始された風力タービンは635基、総出力3.25ギガワットにとどまり、前年比9%減となった。認可と実際の運転開始の間にこのような差が生じたのは、認可を受けてから平均2年以上の建設期間がかかるためである。 ノルトライン=ヴェストファーレン州は、2024年に3.4ギガワット以上の風力発電容量を承認され、初めてドイツ全土をリードした。ドイツ北部、特にニーダーザクセン州、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州、メクレンブルク=フォアポンメルン州でも多数の新規風力発電プロジェクトが承認された。 風力発電業界は楽観的で、許可件数の増加は再生可能エネルギーの拡大を加速させるための政治改革の成功と見ている。とはいえ、業界の代表は、ドイツ政府の野心的な拡大目標を達成するためには、現在のペースを維持し、官僚的なハードルをさらに下げる必要があると強調している。全体として、陸上風力エネルギーは2024年にはほぼ1120億キロワット時を発電し、ドイツの発電量の4分の1以上を占めている。連邦ネットワーク庁によると、2024年の再生可能エネルギー発電所の設備容量は、ほぼ20ギガワット増加し、総容量はほぼ190ギガワットに達し、前年比12%の増加となっている。この発展の主な要因は、太陽光と風力エネルギーの拡充と言われている。

(出典:2025年ハンデルスブラットターゲスシャウドイツ連邦経済省

 

ドイツ、2025年再生可能エネルギー法可決

ドイツの新しい再生可能エネルギー法(EEG 2025)が議会を通過。太陽光発電の普及促進と資金調達の最適化が目指され、発電事業者には重要な変更点がある。自家消費や直接販売義務の強化、スマートメーター導入、蓄電池への助成が新たなルールとして定められ、太陽光発電システムの運営には事前の準備が必要となる。

新しい2025年再生可能エネルギー法(EEG 2025)草案が連邦議会・参議院を通過。これは、太陽光発電のさらなる普及を促進し、資金調達の仕組みを最適化することを目的としている。発電システムの運営者にとって重要な変更点が含まれており、事前の準備が必要となる。以下に、EEG 2025の主なポイントをまとめる。

1. EEG 2025(固定価格買取制度) EEG 2025の中心となる「フィードインタリフ2025」は、太陽光発電の売電価格を決定する制度であり、発電事業者が20年間にわたって安定した収益を確保できる仕組みとなる。 2025年2月1日から7月31日までに運転開始するシステムには、以下のルールが適用される。

  • 部分買取(自家消費後の余剰電力のみ売電)
  • 全量買取(発電したすべての電力を売電) ただし、固定価格買取の単価は6か月ごとに1%ずつ引き下げられるため、2025年8月以降に運転開始するシステムは、より低い買取価格となる。 また、2025年以前に運転開始した既存のシステムは、契約当初の買取価格が20年間維持される。契約期間終了後、100 kWp以下の設備には新たな料金制度が適用される可能性がある。さらに、電力市場価格がマイナスになった場合、新規の発電設備は固定価格買取制度の対象外となる。(既存設備には影響なし)

2. EEG 2025による太陽光発電の新ルール EEG 2025では、太陽光発電の自家消費を推奨し、市場統合を進める方針が示されている。 主な変更点は以下の通り。

  • 2025年1月1日以降、電力市場価格がマイナスの場合、新規の固定価格買取制度が廃止される。
  • 直接販売義務の適用範囲が拡大され、100 kW以上の発電所から25 kW以上の発電所へと引き下げられる。これにより、25 kW以上の発電所の運営者は、補助金を受け取るために市場で電力を直接販売する必要がある。

3. スマートメーターの導入 2025年以降、多くの太陽光発電システムでスマートメーターの導入が必須となる。これにより、自家消費の最適化や送電網との連携が強化される。スマートメーターの年間コストは20~50ユーロと予想されており、小規模なシステムでも導入しやすくなる。

4. 蓄電池への助成 EEG 2025では、バッテリー貯蔵(蓄電池)への支援が強化され、以下の変更が行われる。

  • 新たな「定額オプション」の導入
    • 自家発電した電力だけでなく、送電網の電力も一時的に貯蔵できるようになる。これにより、電力の安定供給が可能となる。
  • 固定価格買取制度の調整
    • 2025年以降、電力市場価格がマイナスの時間帯には、新規発電所に対する固定価格買取が適用されなくなる。
  • 再生可能エネルギーの「制御可能性」強化
    • 太陽光発電の電力を市場で直接販売することが推奨される。これにより、新規・既存の発電所におけるバッテリーの活用が促進される。

(出典:2025年2月10日Forum Verlag、2月3日ドイツ連邦経済省

 

欧州最大級のグリーン水素製造プラント、2026年以降年間9000トン製造へ

2026年に稼働予定の欧州最大級のグリーン水素製造プラントの定礎式が2月12日に行われた。このプラントは、ザルツギッター社の低炭素鉄鋼製造プログラム「SALCOS®」の一環として、年間9,000トンのグリーン水素を生産し、鉄鋼業のグリーン転換を支援する。

2月12日、欧州最大級のグリーン水素製造プラントの定礎式が行われた。このプラントは2026年から、ほぼカーボンフリーの鉄鋼製造を目指すザルツギッター社のSALCOS®プログラムの一環として、低炭素鉄鋼製造用に年間9,000トンのグリーン水素を製造する。 HydrogenPro社の技術を使ってアンドリッツが供給する100 MWの電解プラントは、この転換の重要な要素となる。Salzgitter Flachstahl社とアンドリッツの代表は、このプロジェクトが鉄鋼業のグリーン転換にとって重要であることを強調し、政治的な枠組み条件の支援を呼びかけた。SALCOS®は段階的に実施され、直接還元プラント、電気アーク炉、電解プラントが含まれる。このプロセスによる最初の製品は2026年に利用可能となり、2033年には低炭素鋼生産への完全転換が見込まれている。

(出典:2025年2月20日、ザルツギッター社プレスリリース

Foto: Salzgitter AG

イベント報告

 

1月16日 白馬クラブ新年会

恒例となった白馬クラブの新年会が、今年はハノーファーで開催されました。今回は、日本の政界・経済界の代表者を迎え、盛大に執り行われました。

志野駐独日本大使や戸田在ハンブルク総領事に加え、ニーダーザクセン州連邦・欧州問題・地域開発省の国務長官であるマティアス・ヴンダーリング=ヴァイルビール氏も祝辞を述べました。その中でも特に、シュテファン・ヴァイル・ニーダーザクセン州首相と後藤田正純・徳島県知事による日独パートナーシップ協定の更新が強調されました。

2月18日~19日 GJETC第18回理事会

日独エネルギー変革評議会(GJETC)は、2025年2月18日・19日に東京で第18回理事会を開催し、カーボンプライシングや再生可能エネルギーに不可欠な原材料の確保を中心に議論を行いました。

日独エネルギー変革評議会(GJETC)は、2025年2月18日・19日に東京で第18回理事会を開催しました。今回の議論では、カーボンプライシングや再生可能エネルギーに不可欠な原材料の確保が中心となりました。また、日本の新しいエネルギー基本戦略や、ドイツの選挙がもたらす可能性のある影響、さらにはトランプ政権による地政学的な影響など、政治的動向についても話し合われました。 GJETCは理事会の開催にあわせ、関連するステークホルダーや一般市民との意見交換を目的としたサイドイベントも実施しました。2月18日には、特に産業界の代表を交えたカーボンプライシングに関する対話が行われました。2月19日には、「共同議長・理事会メンバーの紹介」と題した一般公開イベントを開催し、関係者を招待のうえ、現在の研究テーマについて理事会メンバーと直接意見を交わしました。また、同日には日本経済振興財団の協力のもと、「地政学的見地から見たトランプ新政権の課題 - ドイツと日本の見解」と題したラウンドテーブルも開催されました。 各イベントの詳細や評議会の結果については、GJETCのウェブサイトをご覧ください。

https://gjetc.org/about/

2月20日 在日ドイツ大使館での気候変動トーク

パネリストとして、ハリー・レーマン博士(PTXラボ・ラウジッツ所長、GJETC理事)、ナンダ・クマール・ジャナルダナン博士(地球環境戦略研究機関(IGES)副所長兼南アジア地域コーディネーター)、天野由紀氏(エボニック日本調達部長)が登壇しました。エネルギー転換技術に不可欠な原材料の弾力的供給という課題について、専門家からの意見が述べられた後、弊社シリングの司会のもと、パネリストと参加者の間で活発な意見交換が行われました。

ドイツGJETC理事会メンバーが福島のFH2Rを訪問

東京で開催されたGJETC理事会の後、GJETC理事会のメンバーからなるドイツ代表団は、連邦経済・気候保護省(BMWK)の代表とともに福島を訪れ、FH2R福島水素エネルギー研究フィールドを視察しました。

隣接する浪江町の代表者とともに、2011年に発生した福島の三重災害で甚大な被害を受けた浪江町の地域活性化について、活発な意見交換が行われました。 福島第一原子力発電所からわずか30分の距離に、2018年から2020年にかけて、新たなプロジェクト「FH2R福島水素エネルギー研究フィールド」が立ち上げられました。このプロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の資金提供を受け、グリーン水素の製造と利用を試験するものです。既存の20MW(18万m²)の太陽光発電所と130万kWの風力発電所は、今後さらに拡張される予定です。 このプロジェクトの目標は、旭化成が開発した10MWの電気分解機を使用し、1時間当たり1,200Nm³、年間900トンの水素を生産することです。1日の生産量は、150世帯の電力需要を賄うか、約560台の燃料電池車に供給できる規模となっています。

3月24日 BW州・神奈川県共催日独ワークショップ

ドイツ・バーデンビュルテンベルク州交通大臣及びモビリティ企業の訪日を機に、パートナー関係にある神奈川県との共催でスマートモビリティに関する日独ワークショップが開催されました。

「スマートモビリティは、よりスマートで持続可能な都市づくりにどのように貢献できるか?」というテーマのもと、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州と神奈川県が共催する日独ビジネスワークショップが3月24日に開催され、ECOSが運営のお手伝いをさせて頂きました。バーデン=ヴュルテンベルク州は、メルセデス・ベンツやポルシェなどの自動車業界の大企業が本拠を構える地域です。ドイツを代表するモビリティの中心地であり、最先端のモビリティソリューションのグローバルな拠点でもあります。神奈川県は、日本の主要な経済圏の一つで、モビリティ、持続可能性、スマートシティ開発におけるイノベーションの最前線に位置しています。1989年から両地域は協定を結び、未来志向の交通ソリューションの開発に強くコミットしています。 バーデン=ヴュルテンベルク州の交通大臣であるヴィンフリート・ヘルマン氏と政務官フロリアン・ハスラー氏が、10社以上のモビリティ企業からなる代表団を率いて来日したのを契機として、日独の企業のご関係者、イノベーターをお招きし、ビジネス連携を促進するための二国間ワークショップを開催しました。

交通大臣の訪日については、以下の記事(ドイツ語のみ)をご覧ください。

https://www.swr.de/swraktuell/baden-wuerttemberg/verkehrsminister-hermann-in-japan-100.html

https://www.stuttgarter-nachrichten.de/inhalt.autoindustrie-in-baden-wuerttemberg-verkehrsminister-hermann-was-wir-den-japanern-voraus-haben.7830819b-e361-4089-816b-c8f82af5d769.html

4月1日 日独経済フォーラム

ハノーバーメッセで行われた第18回日独経済フォーラムでは、「日独両国における製造業の未来」をテーマに、日独両国の産業界および政治の専門家が一堂に会しました。

本フォーラムでは、日独の工業生産の未来を形作る主要分野における課題やイノベーション、協力の機会について議論が交わされました。 スマート・マニュファクチャリング、ロボティクス、生産・物流分野におけるAIの活用、マニュファクチャリングX、デジタル・エコシステムなどをテーマとしたプレゼンテーションやパネルディスカッションが行われました。 近年、日独経済フォーラムは、ドイツと日本の産業界からハイレベルなプレゼンテーションが行われる場として定着しており、ディスカッションやネットワーキングの機会を提供する貴重な場となっています。 今年の日独経済フォーラムは、JMBC、LEG Thüringen、SAP、NRW.Global Businessによるスポンサー支援を受け、またAHK Japan、BDI、JETROの協力のもと開催されました。


イベント案内

 

5月13日ウェビナー「グリッド技術、EU企業の機会」

エネルギーコンサルタントである弊社ぺーター・ベックが、日本のグリッド市場の状況と欧州企業にとってのビジネスチャンスについて語ります。

日欧産業協力センターのウェビナー・シリーズの一環として、ピーター・ベックが政治的枠組み条件、市場動向、主要技術、関連法規に関する情報を提供します。また、ウェビナーでは、最も重要な競合他社、サプライヤー、販売チャネル、研究機関の概要を紹介し、市場参入の最大の可能性と課題についてお伝えします。

詳細はこちらをご覧ください。

https://www.ecos.eu/de/veranstaltungen/details/grid-technologies-opportunities-for-eu-companies.html

6月17日ウェビナー「日本におけるヒートポンプと地熱エネルギー市場」

日欧産業協力センターのウェビナー・シリーズの一環として、ピーター・ベックが、地熱及びヒートポンプの主要技術における市場動向の概要を説明します。

日本の新たなエネルギー計画では、エネルギー効率の拡大と地熱エネルギーの利用拡大が掲げられています。弊社のエネルギーコンサルタントであるベックが、重要性を増す同市場における欧州企業のビジネスチャンスと課題について語ります。 また、政治的枠組み条件と法的規制にも焦点を当てます。最後に、欧州の中小企業にとっての可能性と課題を評価することで、日本のヒートポンプ・地熱エネルギー市場への参入を検討している企業に対して、包括的で有益な洞察を提供します。

詳細はこちらをご覧ください。

https://www.ecos.eu/de/veranstaltungen/details/heat-pumps-and-geothermal-energy-market-in-japan.html