ドイツのエネルギー・環境分野の最新情報をお届け

2024年第4号

 

目次

 

ごあいさつ

経済ニュース

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特集


ごあいさつ

 

乾燥していて寒すぎず、ここドイツよりも明るい日差しと街の至るところに広がる美しい紅葉―先月訪れた東京の景色は印象的でした。しかし、今回の訪問の目的はその風景以上に、直接顔を合わせる対話の価値を感じるためでした。ビデオ会議では得られない濃密で生産的な議論を、現地での対面の場を通じて実現することができました。 東京での1週間を通じて、長年のパートナーや新たな出会いから得られた数多くの議論の中で、日独間には依然として豊かな協力の可能性が広がっていることを強く実感しました。話題は、水素経済や循環経済、エネルギー転換政策、さらには未来の農業や食料生産といった分野にわたり、科学的交流や政策提言の面で双方が大きな貢献をし合えることを再認識しました。 こうした経験を通じて、私たちECOSのモットーである「持続可能性と日独協力の原動力」が、正しい道を歩んでいるという確信を新たにしました。

本年も大変お世話になりました。皆さまが2025年を健やかに迎えられることを心よりお祈り申し上げます。

ECOS代表取締役

ヨハンナ・シリング


経済ニュース

 

経済政策を巡り、連立政権が対立、崩壊へ

政府が合意した経済成長パッケージの実施及びその財源確保をめぐり、自由民主党(FDP)と緑の党・社会民主党(SPD)が対立し、連立政権が崩壊。ショルツ首相の信任投票が12月に予定され、総選挙の前倒しも視野に入る中、ドイツ経済への影響が懸念されている。

今夏、政府内で合意された経済成長パッケージの実施をめぐり、自由民主党(FDP)、緑の党、社会民主党(SPD)間で対立が激化し、連立政権が崩壊する事態に至った。 ハーベック経済大臣およびショルツ首相は、気候変動対策や経済政策のため、債務ブレーキ規則を改革し、必要な財源を確保すべきとの立場を示していた。一方、リントナー財務大臣(FDP)はこれに強く反対し、気候変動対策関連の補助金をさらに削減すべきだと主張していた。同財務大臣はまた、連帯課徴金(ドイツ統一のために導入された税金で、現在は一部の富裕層・高所得者のみが対象)の完全廃止や法人税の引き下げを提案。さらに、マグデブルクのインテル工場建設に対する補助金の廃止を訴え、その財源をほかの政策に充てるべきだと述べた。一方で、インテル側は赤字経営を理由に工場建設計画を2年間延期すると発表していた。

これに対し、ハーベック経済大臣は企業投資を促進するため、10億ユーロ規模の政府系ファンド設立を提案した。しかし、3党間の議論は平行線をたどり、合意に至ることはなかった。最終的に、リントナー財務大臣は国民に信を問うための選挙を要求したが、これを受けてショルツ首相はリントナー財務大臣を解任。これに伴い、FDPは連立政権から離脱し、連立政権は事実上崩壊した。

現在、ショルツ首相は12月16日に信任投票を予定している。この投票で否決された場合、今年9月に予定されていた総選挙が前倒しとなり、来年2月下旬に実施される可能性が高いと見られている。世論調査では、キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首への支持率が上昇しており、新たな政局の行方が注目されている。 経済界の代表者たちは、連立政権の崩壊を受け、迅速に対応できる新政権の早期樹立を求めている。連立予算の議論がまとまらない状況下では、自動車産業の雇用確保を含む経済パッケージの実施は不透明であり、ドイツ経済への悪影響が懸念されている。

(出典:2024年11月1日ターゲスシャウ、4日WDR、6日ターゲスシャウ、22日ZDF

 

ドイツ経済、赤字の見通し

ドイツ経済省は、鉱工業生産の低迷に加え、サービス部門の景況感が悪化していると発表し、この状況が2024年第4四半期まで続く可能性を示した。主要産業の生産減少や輸出の低迷が顕著であり、ドイツ産業連盟は成長回復とビジネス環境改善のため、政治の積極的な支援を求めている。

ドイツ経済省は、鉱工業生産が引き続き低迷していることに加え、これまで成長を支えていたサービス部門の景況感も顕著に悪化しているとの見解を発表した。この経済状況は、2024年第4四半期まで続く可能性が高いと見込まれている。 特に工業生産の大幅な減少が懸念されており、ドイツ産業連盟は主要産業の低迷について警鐘を鳴らしている。2023年9月の自動車製造は前年同期比で6.9%減少し、機械工学は8.5%減、電気産業に至っては10.7%の減少を記録。また、ドイツ産業連盟は、今年のドイツの輸出が0.5%減少する一方で、世界全体の貿易量が2%増加すると予測しており、2025年の輸出見通しについても下方修正される可能性があると指摘している。 このような状況を受け、ドイツ産業連盟は、ドイツが成長を取り戻し、ビジネス拠点としての魅力を高めるためには、政治の積極的な支援が不可欠であると強調している。

(出典:2024年10月14日ドイツ連邦経済省、11月22日Wirtschaftswoche

©Wirtschaftswoche

インテルに続きヴォルフスピード工場も建設延期へ

ザールラント州で計画されていたヴォルフスピードとZFによる半導体工場建設が無期限延期となり、事実上中止となった。ヴォルフスピードの財務・技術的困難やZFの財政難が背景にあり、同地での再投資やプロジェクト再開の見通しは不透明である。

ザクセン=アンハルト州マグデブルクにおけるインテルのチップ工場建設延期に続き、ザールラント州で計画されていたヴォルフスピードとゼット・エフ(ZF)による半導体工場の建設も無期限延期となることが発表された。この件について、ザールラント州のアンケ・レーリンガー経済大臣がザールブリュッケンで明らかにした。 同プロジェクトは2023年2月に発表されたもので、ヴォルフスピードが約27億ユーロ、ZFが1億7000万ユーロを投資する計画であった。これに加え、連邦政府およびザールラント州から約5億ユーロの国家資金の提供も予定されていた。工場では主に電気自動車向けの半導体が生産される予定であり、とりわけ充電用電子機器向けの製品が中心となる計画であった。

しかし、Handelsblatt紙の報道によれば、この工場はもはや建設される見込みがないという。ヴォルフスピードは現在、多額の損失を抱えており、アメリカ国内で進行中の複数の大型プロジェクトで困難に直面している。また、技術的な問題も重荷となっており、工場予定地となっていたエンスドルフの旧石炭火力発電所も今夏に取り壊されている。

この工場は当初、2025年から建設が開始される予定であったが、現時点ではその計画が完全に棚上げされている。レーリンガー経済大臣は、仮に将来的にヴォルフスピードが同地に再び投資を行ったとしても、ZFが再度プロジェクトに関与するかどうかは不透明であると述べた。ZFは深刻な財政難に直面しており、数カ月前には最大14,000人の人員削減を発表している状況である。

(出典:2024年10月23日ターゲスシャウ、10月24日ハンデルスブラット紙


環境ニュース

 

デンマーク企業、非固定式の洋上風力タービンを建設

デンマークのスティースダール社は、浮体式洋上風力タービンを開発し、水深の深い海域でも低コストでのエネルギー生産を可能にした。このタービンは標準化部品を活用し、設置コストを削減しつつ、利用可能な海域を拡大している点が特徴である。

デンマークのスティースダール社は、地面にしっかりと固定されない洋上風力タービンを建設している。つまり、より深い海域でもリーズナブルなコストでエネルギーを生み出すことができる。この風力タービンを設計したのはデンマークのスティースダル社で、創業者のヘンリック・スティースダルにちなんで名づけられた。シーメンス・ウインドパワーの元チーフエンジニアは、世界の風力発電業界のパイオニアの一人とみなされている。風力タービンの基礎費用は水深に左右され、水深が深ければ深いほどコストは高くなる。水深60メートルあたりから、常設の風力タービンのコストは爆発的に上昇し、経済性が厳しくなる。

一方、浮体式風力タービンは、設置が簡単なチェーンで地面に固定されたプラットフォームの上に立つため、嵐や波の中でもタービンの位置を保つことができる。浮体式タービンは、洋上風力発電に利用できる海域を飛躍的に拡大する。 浮体式風力タービンの他の実験と比べたスティースダール設計のもうひとつの利点は、標準化された部品を使用していることだ。地上に固定された風力タービンにも使われている部品を使用することでコストを大幅に削減刷ることに成功している。

(出典:2024年10月10日、ハンデルスブラット紙

 

EUによる資金、リュダースドルフ・セメント工場CO2回収プロジェクトへ

セメックス社とリンデ社は、ドイツのリュダースドルフ・セメント工場において、年間130万トンのCO2を回収し、2030年までの脱炭素化を目指すプロジェクトにEUイノベーション基金から1億5700万ユーロの資金を獲得した。この計画では、リンデの先進的なCO2回収技術HISORP®が初めて導入される。

セメックス社と、産業ガスおよびエンジニアリングの世界的大手企業であるリンデ社から成るコンソーシアムは、ドイツのリュダースドルフ・セメント工場における先駆的なCO2回収プロジェクトに対し、EUイノベーション基金から1億5700万ユーロの資金提供を受けることが決まった。 このプロジェクトは、セメックスにとってこれまでで最大規模の炭素回収・利用・貯留(CCUS)プロジェクトであり、リューダースドルフのセメント生産から年間130万トンのCO2を回収し、最終的には2030年までに同工場を脱炭素化することを目指している。

リュダードルフでは、リンデの先駆的なCO2回収技術HISORP®が、排出源で排ガスから直接CO2を回収する独自の最先端低温吸着プロセスで初めて導入される。このCO2回収技術は、排ガスから直接CO2を回収するユニークな最先端の低温吸着プロセスで、今回初めて導入される。

(出典:2024年10月22日Cemex社プレスリリース

ドイツの水素プロジェクト、遅滞気味に

ドイツ政府は2030年までに必要な水素の大半を輸入する計画だが、輸入の遅延や市民の反対、事業者不足などで目標達成が危ぶまれている。ブルー水素の活用も進められるが、気候中立性に疑問があり、ドイツの水素プロジェクトは多くの課題に直面している。

ドイツ連邦政府は2030年までに必要な水素の50~70%を輸入しなければならないと予測している。しかし、目標の達成には大きな疑問符がつき始めている。10月22日、ハーベック経済相(緑の党)は、水素コアネットワーク、つまりドイツ国内のどこに水素パイプラインを通すかを示すネットワークを発表した。

中核となるネットワークは、ドイツ国境に13の輸入用ハブを設置し、2032年までに完成させる予定だ。総延長は9040kmで、そのうちの60%は既存のガスパイプラインを水素に変換して使用する予定だ。費用は190億ユーロ弱。これは当初の計画より8億ユーロ少ない。 実現には、各ルート区間の長期的な計画と事業者が必要である。しかし、天然ガスがいつまで既存のパイプラインを通過し続けるのか不明なこともあり、多くの連邦州では事業者がまだ見つかっていない。また、ザールラント州のように、市民運動がすでにプロジェクトに拒否反応を示している地域もある。

また、水素の輸入プロジェクトについても、遅滞が発生している。 デンマークは2週間前、ドイツへの水素パイプラインの敷設を2028年から2031年に延期すると発表した。当初の想定よりも大規模で時間がかかることが理由として挙げられている。また、グリーン水素は希少で高価であるため、ブルー水素が暫定的に使用されることになる。従来の水素と同様、天然ガスを使用して製造される。しかし、その過程で発生するCO2は回収され、地下に貯蔵される。ノルウェーはこの技術のパイオニアであり、最近このようなCCS貯蔵施設を稼働させた。そのためノルウェーは、ブルー水素の供給を速やかに開始できると宣言していた。しかし、最近の研究で、産業界が過渡的な解決策として推進する青色水素は、気候ニュートラルにはほど遠いことが示されている。ドイツの水素プロジェクトは前途多難だ。

(出典:2024年10月22日、ZDF

 

米投資ファンド、独太陽光発電企業Sunfarmingの株式の過半数を取得

投資ファンドI Squaredがドイツの太陽光発電企業Sunfarmingの株式過半数を取得し、農業用太陽光発電(アグリPV)の拡大に今後3年間で5億ユーロを投資する計画である。コストの課題はあるものの、再生可能エネルギー需要の高まりにより、アグリPVへの関心が急速に高まっている。

10億ユーロ規模の投資ファンドであるI Squaredが、ベルリンを拠点とする太陽光発電企業Sunfarmingの株式の過半数を取得した。米国マイアミに本社を置く同ファンドは、今後3年間でドイツ国内における農業用太陽光発電(アグリPV)の拡大に5億ユーロを投資する計画である。 Sunfarmingは、ドイツで最も歴史のある太陽光発電企業の一つであり、特に農業用太陽光発電の分野では最大手の一社である。同社は2004年以来、農業生産と太陽光発電を組み合わせたプロジェクトを企画・建設してきた。このような「畑からの電気」は、省スペースである一方、コストが高いという課題がある。 約400億ドルの運用資産を持つI Squaredは、世界最大級のインフラ投資家の一つである。そのうち70億ドルがエネルギー部門に投資されており、従来型の太陽光発電や浮体式太陽光発電システム、風力発電、送電網インフラなど多岐にわたる分野に資金を投入している。 農地での太陽光発電システムには、6メートルの高さにソーラーパネルを設置する方法や、放牧中の牛や羊の横に垂直に設置する方法など、複数の形態が存在する。これにより土地利用の効率化が図られるものの、導入コストが高いという課題がある。例えば、畑で1キロワット時の電力を生産するには7~12セントがかかるのに対し、大規模なソーラーパークでは同量の電力を2~4セントで生産することが可能である。 それにもかかわらず、グリーンエネルギー需要の高まりに伴い、農業用太陽光発電への関心は急速に高まっている。現在、世界全体で14ギガワットの太陽光発電が農業用耕地に設置されている。フランスや日本がこの分野の先駆者である一方、中国、米国、韓国も数年前からアグリPVを推進している。2023年以降、ドイツでは再生可能エネルギー源法(EEG)に基づき、このようなプロジェクトも資金提供の対象となっている。

(出典:2024年11月7日、ハンデルスブラット紙

 

ハンブルク近郊のシュターデ・エネルギー地域、成長を続ける

ハンブルク近郊のシュターデ工業団地で、2028年までに100メガワット規模の水素製造設備「ハンザ水素」が建設される計画である。このプロジェクトは地域の豊富な再生可能エネルギーやインフラを活用し、エネルギー集約型産業の脱炭素化とグリーン水素需要の迅速な供給を目指している。

ハンブルク近郊のシュターデ・エネルギー地域は成長を続けている。2028年末までに、エルベ川沿いの工業団地に100メガワットの電気分解機が建設される予定だ。Buss Group、Hazwei、KE Holdingの3社は、「ハンザ水素」プロジェクトのコンソーシアムとして、それぞれの専門知識を結集した。コンソーシアムは、2026年に最終的な投資決定を下す予定である。最終的な拡張段階では、2030年までにドイツで計画されている10ギガワットの電解能力の約5%を500メガワットでカバーすることができる。

ハンザ水素は、エネルギー集約型産業を脱炭素化し、水素の立ち上げを加速するために、グリーン水素を製造する。シュターデ工業団地の用地確保に加え、プロジェクト・パートナーはすでに包括的な予備計画を完了し、必要な送電網接続と水供給に関して必要な条件を整えている。ハンザ水素は現在、プロジェクトの認可書類を準備中である。100メガワットの電解槽の建設は2026年に開始される予定だ。その後、2028年までに通常運転を開始する予定である。

再生可能エネルギーの豊富な供給源に加え、このプロジェクトでは、シュターデ工業団地に確立されたインフラがあり、そのすぐ近くには水素貯蔵洞窟が建設されている。このエネルギー地域は、2028年までに水素コアネットワークに接続される予定だ。

(出典:2024年11月18日、Hanseatic Energy Hub

 

第2回再生可能水素オークション 欧州委員会が入札条件を発表

欧州委員会は、2024年12月に再生可能水素製造支援のための第2回オークションを実施し、最大12億ユーロを提供する。この支援は製造コストと販売価格の差を補填し、水素市場の拡大と欧州産業の競争力強化を目指している。

欧州水素銀行(European Hydrogen Bank)の一環として、イノベーション基金は引き続き再生可能水素製造を支援する。欧州委員会は、イノベーション基金を通じた再生可能水素製造のための第2回オークション(IF24オークション)の最終取引条件を発表した。このオークションは、欧州水素銀行(EHB)の重要な柱であり、再生可能非生物起源燃料(RFNBO)に分類される水素の生産者に資金援助を提供する。 オークションは2024年12月3日に開始され、欧州経済地域(EEA)に所在する再生可能水素製造業者に対して最大12億ユーロの支援を行う。昨年のパイロット・オークション(IF23オークション)の成功を踏まえ、第2回オークションは、公的支援による投資のリスクを軽減することで、再生可能水素の欧州市場創設にさらに貢献する。 IF24オークションの落札者は、生産された再生可能水素1kgあたり1ユーロの固定プレミアムを、最長10年間の運転期間にわたって受け取ることができる。イノベーションファンドの支援は、製造コストとオフテーカーが再生可能水素に支払う価格とのギャップを埋めることになる。 第2回オークションの条件には、パイロット・オークションの教訓を踏まえ、ネット・ゼロ産業法(NZIA)の目標にEUの資金が貢献できるよう、新たな弾力性要件が盛り込まれている。プロジェクトは、必要不可欠な商品の安定供給の実現と、欧州の産業におけるリーダーシップと競争力への貢献といった新しい条件で選定される。

(出典:2024年9月27日、欧州委員会プレスリリース

 

持続可能な水素生産に向けた大きな一歩

NorthH2と関連機関は、ドイツ北海のアルファ・ヴェントゥス風力発電所で10MWの洋上電気分解実証機を建設する計画である。このプロジェクトは、洋上での水素生産の可能性を探り、持続可能なエネルギー供給と脱炭素化に向けた重要な一歩となる。

持続可能なエネルギーの未来に向けた画期的な取り組みとして、NorthH2 Projektgesellschaft mbH(NorthH2)、Deutsche Offshore-Testfeld- und Infrastruktur-GmbH & Co. KG(DOTI)、およびStiftung OFFSHORE-WINDENERGIEは、ドイツ北海のアルファ・ヴェントゥス風力発電所に10MW規模の洋上電気分解実証機を建設するため、覚書を締結した。本プロジェクトはNorthH2が進める「NORTHSEA HYDROGEN」構想の一環であり、持続可能な水素生産に向けた重要な一歩となる。

この研究・実証プロジェクトの目的は、洋上での水素生産の可能性と効率性を明らかにし、関連コンポーネントを実環境下でテストすることである。プロトタイプの風力タービンを基盤として使用し、プロトン交換膜(PEM)電解槽には風力発電所の既存の電力供給網から電力が供給される。電解によって発生する廃熱は海水の淡水化に活用され、生成された水は水素と酸素に分解される仕組みである。生成された水素は貯蔵され、凪の期間に再変換する実験も行われる予定である。洋上での水素利用法については検討中だが、物流コストが高額であるため、生産量の増加が課題となる。 将来的には、洋上のAquaDuctusパイプラインを通じて北海と陸上ネットワークを接続することで、水素供給が可能になる。このプロジェクトは洋上電気分解装置の商業運転に向けた重要な洞察を提供するものと期待されている。また、本プロジェクトでは産業パートナーや研究機関にプラットフォームを提供し、生態系研究と同様にコンポーネントやシステムのテストと最適化が進められる予定である。同時に、関係当局が規制枠組みを整備する上での基盤となることも見込まれている。

NorthH2のCEOアンドレアス・ウェルブロック氏は、「10MWの洋上電気分解実証機は、洋上での直接的なグリーン水素生産を可能にする重要なステップである。これにより、送電網接続の課題を回避しながら、生産効率と持続可能性を大幅に向上できる」と語った。

ドイツ洋上風力エネルギー財団のCEOカリーナ・ヴュルツ氏も、「水素分野の市場拡大は多くの技術的・経済的課題に直面しており、洋上での水素生産ではさらに厳しい条件が求められる。北海の過酷な環境が技術やメンテナンスに与える影響を冷静に検証することが極めて重要である」と述べ、同財団がアルファ・ヴェントゥス試験サイトを活用してこれらの取り組みを支援することに意欲を示した。

(出典:2024年11月26日、PVマガジン

 

第二回北ドイツ水素会議、ハンブルクで開催  

ハンブルクで開催された会合では、沿岸5州の専門家が水素経済市場の立ち上げの遅れについて議論した。厳しいEU基準や短い移行期間が水素プロジェクトの投資決定を妨げており、解決策の模索が求められている。北ドイツ水素戦略の目標達成には追加の枠組み整備が必要である。

ハンブルクのベッセンビンダーホーフにおいて、沿岸5連邦州から集まった250名以上の専門家が会合を開き、ドイツでの水素経済市場の立ち上げに必要な対策について議論を行った。現時点で、水素コアネットワークの決定や規制枠組みの整備は進展しているが、実際に投資決定がなされたプロジェクトは依然として計画段階を大きく下回っている。会合では、国内の生産施設と水素輸入プロジェクトに関する課題や解決策について、業界の著名な専門家が意見を交わした。

沿岸5州はグリーン電力の割合が特に高く、これを水素電解に活用する予定である。また、ドイツに輸入されるグリーン水素やその派生品は、北部の海港や輸入パイプラインを経由して到着することから、北部地域はエネルギー転換における戦略的な要衝となっている。このような背景のもと、沿岸諸州は2019年から北ドイツ水素戦略を共同で実施しているが、市場立ち上げの遅れが大きな懸念となっており、連邦政府が掲げる水素戦略の拡大目標は達成が困難とみられている。

特にパネルディスカッション「持続可能な水素市場のための採算性、スピード、枠組み条件」では、ドイツ北部の水素プロジェクトが投資決定に至らない具体的な問題点が議論された。EUの厳しい基準により、水素製造に必要なグリーン電力の調達コストが高騰し、プロジェクトの経済性が損なわれている点が指摘された。また、規制枠組みの移行期間が短く、多額の投資が必要とされる中で、長期的な投資の保証が欠如していることも課題として挙げられた。こうした問題を克服するための具体的な解決策の模索が、今後の鍵となるであろう。

(出典:2024年11月27日、Windkraft Journal

 

©Henning Angerer

ドイツ、COP29において計6000万€を拠出することを表明

ドイツはCOP29で気候適応基金に6,000万ユーロを拠出し、これまでに累計6億4,000万米ドルを支援した最大のドナーである。また、国際気候イニシアチブを通じ、エコロジカルな輸送やエネルギー効率など8分野での課題解決を進めている。

ドイツ連邦環境省と外務省は、COP29において気候適応基金に6,000万ユーロの追加拠出を発表した。同基金は、気候変動リスクの高い国々を支援し、これまでに4,500万人以上を対象とした180以上のプロジェクトを実施している。ドイツは、2007年の基金設立以来累計6億4,000万米ドルを拠出した最大の支援国であり、国際気候イニシアチブ(IKI)を通じて適応プロジェクトの推進にも尽力している。また、ドイツは国際気候イニシアチブの一環として新たなアイデアコンペを開始し、パートナー諸国の支援を目的に民間投資を動員している。この取り組みは、エコロジカルな輸送、エネルギー効率、持続可能な生物多様性管理を含む8分野の課題に対応することを目指している。

(出典:ドイツ連邦経済開発省、2024年11月19日ArgusMedia

 

ドイツ連邦産業・気候行動基金:製造業の脱炭素化の加速化支援

ドイツ連邦経済・気候保護省は、連邦産業・気候行動基金(BIK)を通じ、製造業の脱炭素化とCO2回収・利用(CCU)および貯留(CCS)のプロジェクトを支援している。このプログラムは、国内外の気候目標達成と革新的な技術導入を推進し、2045年までにCO2換算で4,000万トンの削減を目指している。

ドイツ連邦経済・気候保護省は、連邦産業・気候行動基金(BIK)を通じて、製造業における気候変動対応型投資や研究開発、イノベーションプロジェクトを支援している。このプログラムは、国内および欧州の気候目標の達成に貢献し、変革を促す技術の導入を加速させるものである。特に、産業の脱炭素化とCO2の回収・利用(CCU)および貯留(CCS)を支援する2つの資金モジュールが提供されている。 モジュール1「産業の脱炭素化」では、製造業の温室効果ガス排出量を恒久的かつ大幅に削減する革新的なプロジェクトに資金を提供する。これにより、ドイツ製造業の温室効果ガスニュートラル達成が目指され、他の企業に適用可能なモデルケースを提供する。 モジュール2「CCU/CCSへの資金提供」では、産業や廃棄物管理分野における炭素回収・利用および貯留のプロジェクトを支援する。資金提供は、プロジェクトがドイツ政府の炭素管理戦略に合致し、法的要件を満たす場合に限られる。効率性、すなわち2035年までのCO2削減トン数と予算額の比率が重要な評価基準となる。この取り組みは、2045年までにCO2換算で4,000万トン削減を目標としている。

(出典:気候保護・エネルギー集約型産業コンペテンスセンター

 

ブリュッセルで欧州水素ウィークが開催

欧州水素週間2024は、ブリュッセルで開催され、水素技術の最新動向や政策、研究成果が議論された。展示や実演を通じて技術革新が紹介され、EUの競争力強化や脱炭素化への取り組みが強調された。

欧州水素週間2024が、2024年11月18日から21日までブリュッセルで開催された。水素技術の最新動向や研究成果、政策について多岐にわたる議論が行われた。今年のイベントでは、新設された「イノベーションハブ」と「イノベーションフォーラム」が注目を集め、EU全体の競争力向上、スキル開発、水素バレー(地域水素プロジェクト)の推進が主要テーマとなった。 展示エリアでは、電解槽や燃料電池の最新技術が紹介された。さらに水素トラックやバス、水素車両の実演も行われ、参加者が直接体験できる場が設けられた。可搬型水素発生器や改造された水素動力列車といった革新的な技術も披露され、来場者の注目を集めた。欧州水素週間は、持続可能な未来を見据えた水素技術の可能性を広げ、産業界と政策立案者が一堂に会する重要な場となっている。

(出典:2024年11月27日 Clean Hydrogen Partnership、11月19日Fuel Cell Works

©EuropeanHydrogenWeek

ドイツ連邦内閣、国家循環経済戦略を採択

ドイツ連邦内閣は「国家循環経済戦略(NKWS)」を採択し、一次原材料消費削減、物質循環の拡大、廃棄物削減を目指す。戦略は、循環経済の推進を通じて経済の自立性を高め、競争力を強化することを目的としている。

ドイツ連邦内閣は、「国家循環経済戦略(NKWS)」を採択し、一次原材料の消費削減や循環経済の促進に向けた基盤を整備する方針を示した。この戦略は、物質循環の確立、原材料の長期的利用、廃棄物削減を目的とし、環境保護と経済発展の両立を目指すものである。同戦略の主な目標は以下の通りとなっている。

• 一次原材料消費の削減: 2045年までに個人消費量を現在の16トンから6~8トンに削減。

• 物質循環の拡大: 現在13%の二次原材料使用率を2030年までに倍増。

• 原材料輸入依存の低減: 2030年までに戦略的原材料需要の25%をリサイクルで賄うことを目標。

• 廃棄物削減: 一人当たりの廃棄物を2030年までに10%、2045年までに20%削減。

循環経済推進の重点分野として、デジタル化、再生可能エネルギー、建設、プラスチックなど11分野を指定。製品設計やリサイクル基準、デジタル製品パスポート導入、公共調達政策を通じて具体的な行動を展開する。循環経済は経済自立性を高め、新たなビジネス機会を創出する。推定では、2030年までに年間付加価値が120億ユーロ増加し、12万人の雇用が創出される。戦略の実現には、ステークホルダーとの連携が不可欠であり、ドイツはEU全域の循環経済の先導役を目指している。

(出典:2024年12月4日、ドイツ連邦環境省プレスリリース


イベント報告

 

10月15日 ウェビナー「日本のエコ住宅市場の現状と可能性」

日EU産業協力センターのウェビナー・シリーズ「About Japan」の一環として、弊社は持続可能でエネルギー効率の高い建築に関する日本市場の現状と可能性について紹介しました。

日EU産業協力センターのウェビナー・シリーズ「About Japan」の一環として、弊社は持続可能でエネルギー効率の高い建築に関する日本市場の現状と可能性について紹介しました。 本ウェビナーは、日本のエコハウス市場への参入を検討しているEU企業を対象として開催され、弊社シリング及び長谷川が、日EU産業協力センターの委託を受け、開催したものです。レポートは日EU産業協力センターのウェブサイトからダウンロード頂けます。 その他の情報につきましては、弊社ウェブサイトをご覧ください。

 

10月23日 オンライン講義「ネット・ゼロへの道:ドイツと日本の気候政策」

GJETCのメンバーであるミランダ・シュルース氏が、「再生可能エネルギーに関する日独オンライン講義シリーズ」の一環として、「ネット・ゼロへの道:ドイツと日本の気候政策」と題して講演を行いました。

日独エネルギー変革評議会(GJETC)のメンバーであるミランダ・シュルース氏が、「再生可能エネルギーに関する日独オンライン講義シリーズ」の一環として、「ネット・ゼロへの道:ドイツと日本の気候政策」と題して講演を行いました。法政大学の高橋洋教授とMHM-globalの足立智彦弁護士に、日本の視点を提供されました。

 

10月29日 ウェビナー「脱炭素電力システムにおけるエネルギー安全保障」

GJETCのメンバーである太田光明氏が、電力市場設計に関するGJETCの研究結果を発表。

日本エネルギー経済研究所(IEEJ)主任研究員で日独エネルギー変革評議会(GJETC)研究チームメンバーの太田光明氏が、電力市場設計に関するGJETCの研究成果を発表しました。このプレゼンテーションは、ウェビナーシリーズ「Zoomin!日独エネルギーパートナーシップ 日独エネルギー転換トーク」の枠組みで開催されたものです。GJETCの研究「電力市場設計-日独における柔軟性への投資を支援する手段」はGJETCのウェブサイトでご覧いただけます。

 

11月5日 DJWシンポジウム

日独経済協会(DJW)が東京で開催したシンポジウムでは、日本の人口問題や外国人労働者の統合を議論し、日独間のネットワーク強化と持続可能な成長に向けた協力の重要性が確認されました。

日独産業協会(DJW)が東京で開催した最新のシンポジウムでは、日本の人口問題や外国人労働者の統合をテーマに活発な議論が行われました。この場は、日独間のネットワークをさらに強化し、パートナーシップを促進する貴重な機会ともなりました。直接会談の中では、喫緊の課題に共同で取り組む必要性が共有され、持続可能な成長を支えるためには、協力と専門知識の交換が欠かせないことが改めて確認されました。シンポジウムを通じて、日独両国の専門家や経営者を結びつける架け橋としてのDJWの重要な役割が改めて強調されました。

©DJW

11月13日 後藤田徳島県知事のハノーバーご訪問

ハノーバーで開催された後藤田正純徳島県知事とヴァイル・ニーダーザクセン州首相との会談に弊社代表メームケンが同席させて頂き、サーキュラーエコノミー構想について説明させて頂く機会を頂戴しました。

ニーダーザクセン州と徳島県のパートナー協定の更新のため、後藤田正純徳島県知事がハノーバーを御訪問され、ヴァイル・ニーダーザクセン州首相と会談をしました。ハンブルク日本総領事館にお声がけ頂き、弊社代表メームケンが会談に同席させて頂き、オスナブリュックを中心とした農業クラスター及びサーキュラーエコノミー構想について説明させて頂く機会を頂戴いたしました。

 


 

イベント案内

 

2025年2月17日~20日 日独エネルギー変革評議会理事会

日独エネルギー変革評議会(GJETC)の第18回理事会が2025年2月に東京で開催され、日独の専門家がエネルギー転換や気候協力に関する議論を行います。会議では、ステークホルダーとの対話や一般向けイベントも予定されており、日独間のエネルギー・気候分野の対話を促進します。

2月中旬、東京の日本エネルギー経済研究所(IEEJ)にて、日独エネルギー変革評議会(GJETC)の第18回会合が行われます。今回も日独の専門家たちが集まり、エネルギー転換に関する重要なテーマについて議論を深めます。 現在、GJETCは以下の2つのテーマに注目しています:

  • カーボンプライシングメカニズムの受容性
  • 再生可能エネルギーに関連する重要原材料の役割

これらのテーマに関する報告書(インプットペーパー)は、来年3月に発表予定です。

また、理事会に加えて、以下のような公開イベントも開催されます。

ステークホルダー・ダイアログ

日時:2月18日(火)15:30~18:00(日本時間)

内容:カーボンプライシングメカニズムの受け入れに関する議論を行います。理事会メンバーに加え、関連企業・団体の代表者が参加します。

一般公開イベント「Meet the Co-Chair」

日時:2月19日(水)11:30~12:30(日本時間)

内容:理事会の活動内容や日独双方のエネルギー転換戦略について知ることができます。また、エネルギーや気候保護分野で直面する共通の課題についても意見交換を行います。

イベントの詳細はGJETCのウェブサイトをご覧ください。

公開イベントへの参加をご希望の方は、以下の連絡先までご連絡ください: ヨハンナ・シリング Email: jschilling@ecos.eu

2025年4月1日 第18回日独経済フォーラム

日独経済フォーラムは、2025年に第18回目を迎えます。ドイツと日本の工業生産の未来を形作る課題、革新、協力の機会について議論を行う予定です。

日独経済フォーラムは、2025年に第18回目を迎えます。2025年4月1日、日独両国の産業界と政界の専門家が、ドイツと日本の工業生産の未来を形作る課題、革新、協力の機会について議論します。 「Shaping the Future of Manufacturing Together(ものづくりの未来を共に創る)」と題し、以下のトピックを取り上げる予定です。

• スマート・マニュファクチャリング

• ロボティクス

• 生産・物流におけるAI

• マニュファクチャリングX

• デジタル・エコシステム

詳細および参加条件については 弊社ホームページをご確認ください。


特集

 

オスナブリュック発スタートアップ企業、TechBizKonでPlug and Play賞を受賞

12月4日のTechBizKon東京で、ドイツ・オスナブリュックのスタートアップSeedaliveがPlug and Play Award賞を受賞。AIを活用し、種子の発芽能力や老化プロセスを効率的に予測する技術を開発しました。

12月4日に東京で開催されたスタートアップイベントTechBizKonで、ニーダーザクセン州オスナブリュックのスタートアップ企業SeedaliveがPlug and Play賞を受賞しました。同社は、植物種子の発芽能力を予測するための、効率的で再現性のある新しい方法を開発しています。また、AIを活用し、種子の老化プロセスや苗の活力に関する予測も可能としています。ニーダーザクセン州、特にオスナブリュック周辺地域は、ドイツ国内でも有数の農業・食料生産クラスターが広がっています。同州の農業・食料生産セクターに関する情報は同州のホームページをご参照ください。

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